ソーダロンのブログ

読んでも何のタメにもならないけど、良い暇つぶしになるような記事を書きます

幼稚園の幻影旅団

「全部だ、冷凍庫のチューペット丸ごとかっさらう」

仲間の誰かが放ったこの一言が
あの日、まだ幼かった僕たちを『盗み』へと駆り立てた

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これはまだ僕が幼稚園児だった頃の夏の話

当時僕が通っていた幼稚園では、お昼の給食の後にデザートとして1人1本ずつチューペットが配られていた。
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夏ということもあり、このチューペットを冷凍庫でカチカチに凍らしたものは毎日の楽しみの1つとなっていた。

こんなに甘く冷たい魅力的な代物を前にして
当時まだ3,4歳のガキンチョたちは1日1本で満足できるはずもなく、クラス内でチューペットを奪い合う争いが頻発した。

隣の子の分をこっそり奪いとる程度ならまだしも、時にはチューペットを食べている子を後ろから羽交い締めにし、その隙にもう1人がチューペットを強奪するといった暴力行為に手を染める園児も現れ始めた。

こうしたクラスの惨状を見かねた先生たちは
事態の収束を図るべく、早々に食後のチューペット配布を中止にしてしまった。

誘い

チューペット事件のほとぼりが冷め始めたとある昼下がり、僕は友人のオオヤと一緒に日課である泥の城建設に興じていた。
いつも通り砂場にバケツいっぱいの水をぶちまけ泥を練っていると、隣でひたすらに深い穴を掘り続けていたオオヤが僕にそっと耳打ちをしてきた。


チューペットがどこにあるか、知りたくない?」


ドクン


心臓が跳ね上がる


うっすら僕の記憶から薄れかけていたあのカラフルで魅力的な棒たちの姿が蘇る

チューペットの保管場所????それは先生たちしか知らない極秘事項のはず、、、そんなもの給食の時間中は大人しく席に座らされている僕たちが知っているはずがない、、、
こいつ俺をからかっているのか?)

俺このあいだ給食中にお腹痛くなってトイレ行ったじゃん?その帰りに見ちゃったんだよね、園長室からチューペットの袋持って出てくる先生たちをさぁ」


ドクンドクン


心臓の鼓動が早くなる


(たしかに、園長室は原則として園児達の立ち入りは許されていない。仮に、その園長室の中に冷凍庫があり、そこにチューペットが保管されていても不思議はない。
この情報、マジだ)


「その話、本当?」

僕がたずねる

コクン

オオヤはゆっくりと頷いた。

•チーム結成

泥遊びを終えたその後、僕とオオヤは数名の友達を集めこの作戦の間だけではあるが即席の窃盗チームを結成した。チーム名は僕が当時読んでいたハンターハンターに出てくるチーム名からとり「幻影旅団」と名付けた。

•団員No1 【オオヤ】

この作戦を発案した張本人
クラス1頭が良く幼稚園児にしてすでに小学生が習う勉強を家で開始していた。周りからの人望も厚い
非常に野心家で、砂場をスコップで掘り続けたらいつか地球の裏側にあるブラジルにたどり着くと本気で信じていた。
玉ねぎが苦手

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※写真はイメージ


・団員No2 【チヒロ】

幼稚園内で最も腕相撲が強い。体もでかい
その腕っ節の強さから年長の園児からも一目おかれている
その一方で食べ物の好き嫌いが多く、よく給食を食べ終えるまで泣きながら居残りをさせられていた

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*写真はイメージ


・団員No3 【コウキ】

幼稚園1の悪童
上述したチューペットを他の園児から強奪し始めた張本人
以前になぜそんなことをしたのか本人に聞いてみたところ
「他の奴が食べてるものってなんか美味そうに見えるんだよなぁ」
と黒バスの灰崎みたいなことを言っていた。
給食中に担任が座っている椅子を引っこ抜き尾骶骨(びていこつ)骨折の怪我を負わせ幼稚園を震撼させた。

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*写真はイメージ


・団員No4 【ソーダロン】

このブログの作者
泥の扱いに長けており、誰よりも綺麗な「ピカピカ泥団子」を作ることができる
非常に食いしん坊であり、給食の残飯処理を進んで引き受けることにより先生から一目置かれていた。
足がおそい

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*写真はイメージ

・作戦

メンバーが揃ったところで僕たちは人目のつかないように
お遊戯室の中にある用具倉庫の中に集まりオオヤから今回の作戦の内容を聞かされた

【作戦内容】

①園長室に常駐している先生を、一緒に遊ぼ!と誘い部屋から連れ出す

②その隙に部屋に侵入し、チューペットをかっさらう

以上。

作戦は至ってシンプルなものだった。4歳の園児が考えた割には上出来といえるだろう。

役割としては悪童のコウキが先生を連れ出し、その隙にリーダーのオオヤと私ソーダロンが園長室に侵入。
念のため園長室に他の先生や園児が近づかないように力自慢のチヒロを見張りに立たせる。といった形となった。

作戦決行は少し急だが翌日になった。
理由は早くチューペットを食べたかったからである。

・作戦決行

そして翌日

僕たちは作戦の最終確認をするためにまたお遊戯室の隅にある用具倉庫に集まった。

団員達の様子を見ると皆少しばかり緊張しているようで、コウキは落ち着きなく部屋中をうろうろし、チヒロはポケモンのハンカチをずっと握り締めていた。
かくいう僕も昨晩は緊張とワクワクで夜の10時ごろまで寝付くことができず少し寝不足な状態だった。(普段なら8時には寝ている)

いつもは冷静なオオヤも今日ばかりは顔がこわばり、少し手が震えていた。


「びびってるの?」


僕が訪ねる。

するとオオヤは一拍おいた後、こう答えた。


「むしゃぶるいだよ」

どこで覚えたんだそんな難しい言葉。

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最終確認を終え、園長室の周りに誰もいないことを確認してから僕たちは行動を開始した。

手筈どおりまずコウキが園長先生を外に連れ出す。
影から様子を伺っていたが、自分がめちゃくちゃブランコを漕ぐから横で見ていてほしい。というかなり無理やりな理由で先生を連れ出そうとしていた。もっと良い誘い方あるだろと内心ツッコミを入れていたが、上手くいったようで先生はコウキと仲良く手をつないでブランクの方へ歩いて行った。

作戦の第一段階は成功

ほっとする間もなく僕とオオヤは園長室に忍び込む。

そして部屋に入った瞬間に僕たちは見つけた。おそらくチューペットが保管されているであろう冷凍庫の姿を

しかし


「デカくない?」


冷凍庫を見た時最初にでた感想がそれだった。

でかい、おばあちゃんちにあるタンスぐらいでかい。
目の前にある冷凍庫は扉が二つついており。どうやら下の扉が冷蔵庫、上の扉が冷凍庫になっているタイプのようだった。

僕とオオヤの身長が低めなこともあり、とても一人では手が届きそうになかった。

(どうする。どう考えても扉に手が届かないぞ。チューペットは諦めるか?いやでもここまできて手ぶらで帰ることは、、、、)

パニックになりながら頭の中でそんな葛藤を繰り広げていると、さっきから黙ったままだったオオヤが口を開きこう言った。


ソーダロン、台になってくれ」


僕はうなずき、黙って冷凍庫の前で四つん這いになった。

今考えると部屋の中の椅子に登るなどすれば簡単に冷凍庫に手が届いたのだが、突然のイレギュラー発生により僕たちは冷静な判断ができなくなっていた。

ずしりと背中に重みがかかる。
その重みに耐えかね、腕がプルプルと震える。
急げオオヤ、俺の体はそう長くはもたんぞ!!!!!!

必死に台役に徹していると、頭上ではガチャっと扉の開く音がした。

「あった!あったぞ!!!」

どうやら無事チューペットを見つけたようだ
あとはそれを持てるだけ持って園長室からずらかるのみ。

しかし

オオヤの台となり、全体重を支えていた僕の腕はもう限界だった。

ガクっ
重さを支えきれず腕が曲がる
そしてバランスを崩しチューペットを両手いっぱいに抱えたオオヤが床に倒れる。


ドガッッガシャガシャッズザーーーーーッッッ



だいぶ派手に倒れたので近くにあった金属製のラックや本棚を巻き込み、めちゃめちゃでかい音がなる。そして床には袋から飛び出したカチカチのチューペットが散乱していた。

夕日に照らされてチューペットがカラフルな光を放っていた

・作戦失敗そして

あの後、物音を聞きつけた園長先生がコウキと見張りのチヒロの静止を振り切り
部屋に突入。僕たち幻影旅団は現行犯逮捕され作戦は失敗に終わった。

泣きそうな顔をしながら先生のエプロンを後ろから引っ張り、突入を食い止めようとする二人の顔は今でも鮮明に覚えている。

この後僕たちは先生達に泣くほどお説教をくらい、連絡帳にもしっかりとこの事を書かれ、親にも泣くほど怒られた。

罰として僕は母の念能力、律する小指の鎖(ジャッジメントチェーン)の制約により1週間友達と遊ぶことを許されなかった。

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残念ながら周りに除念師はいなかった。